結論から言うと、お墓参りの帰り道に10分だけ寄り道すれば、実家の様子はひと通り確かめられます。見るのは郵便受け・飛びそうなもの・写真・ご近所への一声・メーターの5つです。
- お彼岸の日付が毎年動くのは暦の都合ではなく天文現象。前の年の2月まで正式には決まらない
- 10分でできるのは5つ。郵便受けの溜まり具合/飛びそうなもの/毎回おなじ4か所の写真/ご近所への一声/水道と電気のメーター
- 「点検に行く」と気負わないほうが続く。年2回の様子見の口実として使う
「今年のお彼岸って、いつからだっけ」毎年この時期に、カレンダーを見て確かめる。お盆は8月13日から16日、正月は1月1日と決まっているのに、お彼岸だけは毎年どこかへ動いてしまう——実はこれ、気のせいではありません。
お彼岸の日付が毎年ズレるのは、暦ではなく天文現象だから
秋のお彼岸は、秋分の日を真ん中(中日)にして、その前後3日ずつを合わせた7日間を指します。初日を彼岸入り、最終日を彼岸明けと呼びます。つまりお彼岸の日程は、秋分の日がいつになるかで丸ごと決まる。
では、その秋分の日はどう決まっているのか。
国民の祝日に関する法律には、日付が書かれていません。書いてあるのは「秋分日」という一語だけです。これは天文学の用語で、太陽が秋分点を通過する瞬間を含む日のこと。地球の公転はきっちり365日ではないため、この瞬間は毎年少しずつズレていきます。
そこで国立天文台が太陽の運行を計算し、その結果が前年の2月1日、官報に「暦要項」として掲載された時点で正式決定となります。近年は9月22日か23日のあたりに落ち着いていますが、あくまで計算による予測で、法律で固定された日付ではありません。
ちなみに「彼岸」という言葉自体は、向こう岸という意味です。此岸(しがん)=迷いのこちら側から、川の向こうへ渡る。サンスクリット語のパーラミターを漢訳した「到彼岸」が語源とされ、平安時代にはすでにあった日本独特の風習だといわれています。
千年以上続いてきた行事なのに、日付が毎年動く。ちょっと不思議な話ですよね。
日付は動くのに、行き先は動かない
ただ、ここからが本題です。
日付が動こうと、お彼岸に向かう先は毎年同じです。お墓の場所は変わりません。そして多くの場合、お墓は先祖が暮らしていた土地の近くにあります。菩提寺にしても、集落の共同墓地にしても、車で数分から十数分。実家とお墓が、そう遠くないという家は少なくないはずです。
これは、意外と大きな意味を持ちます。
遠方に住んでいると、実家の様子を見に行くのは腰が重い。往復の交通費と時間を「様子を見るためだけ」に使うのは、正直しんどい。だから「次の連休に」「気になったときに」と先送りになって、気づけば一年が経っている。
ところがお彼岸は、すでに現地へ行く予定が立っている。車も出している。家族も何人か一緒にいる。しかも春と秋、年に2回めぐってきます。
新しく予定を作るのはしんどくても、すでにある予定に10分足すだけなら、たいていの人はできます。実家や空き家の様子を見に行く動線として、お彼岸の墓参りはかなり優秀なのです。

お墓参りの帰り道に、10分だけ寄り道する
とはいえ、力まないでください。ここでやるのは、鍵を開けて中に入る本格的な点検ではありません。車を停めて、外から眺めて、写真を撮って、また乗る。それだけです。
外から見るだけで気づけることを、5つに絞ってご紹介します。
① 郵便受けの「溜まり具合」を見る
まず目に入るのが郵便受けです。ここは、鍵がなくても外から状態がわかる数少ない場所。
見るのは中身ではなく溜まり具合のほうです。投函口から広告紙がはみ出していたり、隙間から封筒が見えていたりすると、それは「この家には誰も来ていません」という看板を外に向けて立てているのと同じことになります。空き巣にとっても、不法投棄をする人にとっても、わかりやすいサインです。
だから、あふれているものを抜いて持ち帰るだけでも意味があります。中身の仕分けは、家に帰ってからで構いません。それより、郵便受けが空になっている状態を作って帰ることのほうが効きます。
もし毎回あふれているようなら、郵便局の転送届を出すか、投函口にフタをする。そこまでできれば上出来です。
② 家のまわりをひと周りして、「飛びそうなもの」だけ見る
次に、家のまわりをぐるっと一周します。歩いて2〜3分。
このとき見るのは、屋根の状態でも雨漏りでもありません。強い風が吹いたら動きそうなものだけです。物置の脇に立てかけたトタン板、庭に出しっぱなしのプランターやバケツ、ぐらついている自転車、道路側にはみ出している枝。
秋のお彼岸は、ちょうど台風シーズンの終盤にあたります。飛んだものが隣の家や通行人に当たれば、持ち主の責任が問われることもある。この話は少し長くなるので、空き家の台風被害と損害賠償のほうで詳しく書いています。
ここでやるのは、ひっくり返して壁際に寄せるくらいの軽い作業で十分です。腰を痛めない範囲で。
ついでに、草の伸び具合も見ておいてください。夏を越えた庭は思っている以上に育っています。手に負えない量なら、そのことがわかっただけでも収穫です(夏の空き家管理で、雑草と害虫の話をしています)。
③ 毎回おなじ4か所を、写真に撮る
これがいちばんおすすめしたい所作です。スマホで4枚だけ撮る。
- 家の正面(道路から見た全体)
- 裏側または側面
- 庭・駐車スペース
- 郵便受けまわり
大事なのは、毎回できるだけ同じ場所から、同じ角度で撮ることです。1回目の写真には、正直あまり価値がありません。ところが半年後、次のお彼岸に同じ4枚を撮ると、そこで初めて「差」が見える。
雨どいが外れかけている。壁の色がここだけ変わっている。塀にひびが入っている。こういう変化は、一枚の写真を見つめていても気づけません。前回と並べて初めてわかるものです。
写真には撮影日時が自動で記録されますから、あとから「いつからこうなっていたか」をたどれます。修理を頼むときも、業者に電話で説明するより写真を1枚送るほうが早い。10秒の手間で、これだけのことができます。
④ ご近所に、一声かけて帰る
お隣や向かいの方が庭に出ていたら、挨拶をして帰りましょう。「お彼岸で墓参りに来たので、ついでに寄りました」で十分です。
これには2つの意味があります。ひとつは、この家には管理している人がいると地域に知られること。もうひとつは、何かあったときに連絡が届くようになることです。
実際、空き家で起きるトラブルの多くは、近所の方が最初に気づきます。屋根から音がしていた、雨戸が開いたままだった、知らない車が停まっていた。こうした情報は、連絡先を知っている相手にしか届きません。
携帯番号を書いたメモを渡しておくだけで、次の一年の安心感がまるで違ってきます。渡すのが気恥ずかしければ、名刺の裏に書くくらいの感じで構いません。
⑤ 水道と電気のメーターを、ちらっと見る
最後に、メーターです。たいてい家の外側、道路から見える位置にあります。
誰も住んでいない家なのに、水道メーターのパイロット(銀色の小さな円盤)が回っていたら、それは漏水のサインです。床下や壁の中で水が漏れ続けていると、家の傷みが一気に進みますし、水道料金も加算されていきます。
電気メーターも同じで、契約を残したまま止めているつもりの家で数字が進んでいるなら、何かが動いているということです。冷蔵庫を残していた、ブレーカーが落ちていなかった、といった心当たりがあればそれで説明がつきますが、思い当たらないなら確認する価値があります。
見るだけなら5秒です。数字をメモしておけば、次の来訪時に「半年でどれだけ進んだか」もわかります。
「点検に行く」と思わないほうが、続きます
ここまで5つ挙げましたが、ぜんぶやっても10分から30分です。合鍵を出す必要も、脚立に登る必要もありません。
あえてこの軽さにこだわるのには、理由があります。
気合いを入れた計画ほど、続かないからです。「次に帰ったら、押し入れを全部出して仕分けしよう」——そう決めた予定は、たいてい実行されません。丸一日かかると分かっているものは、そもそも予定に入れるハードルが高いのです。
いっぽう、すでにある予定にくっついた10分は、ちゃんと実行される。墓参りに行った。その帰りに寄った。写真を4枚撮った。これなら、疲れていてもできます。
そして年に2回、春と秋。5年続ければ10回分の記録が残ります。10回分の写真があれば、家がどんなペースで傷んできたのかが目に見えるかたちで手元にある。これは、思い立って一度だけ本格的な点検をするより、ずっと役に立ちます。
もちろん、写真を見比べて「これは放っておけないな」と感じたときは、そこから中に入ってきちんと見ればいい。軽い所作は、重い判断が必要な時期を教えてくれる装置でもあります。順番としては、そちらのほうが自然です。

まとめ — お彼岸は、年2回の「様子見」の口実になる
- 秋のお彼岸は秋分の日を中日とした前後3日、計7日間。日付が毎年ズレるのは天文現象だからで、正式決定は前年2月1日の官報
- 日付は動いても行き先は動かない。お墓と実家が近い家は多く、すでに現地へ行く予定が立っている
- 新しい予定を作るより、ある予定に10分足すほうが実行される
- 外から見るだけでできるのは、①郵便受けの溜まり具合 ②飛びそうなものだけ確認 ③毎回同じ4か所を写真に ④ご近所に一声 ⑤水道・電気メーター
- 写真は2回目から効いてくる。前回と並べて初めて変化がわかる
- 本格的な点検は、写真で気になる変化が出てからで間に合う
お彼岸の日程は、その年の秋分の日次第で前後します。今年がいつからいつまでかは、カレンダーか国立天文台の暦要項でご確認ください。
お墓に手を合わせて、その足で実家の前を通る。降りて、10分。それだけで、次の半年の見通しはずいぶん違ってきます。帰省の日程にもう少し余裕があるなら、帰省で実家の片付けを進めるときの段取りもあわせてどうぞ。
このコラムは、高松市で不用品回収・実家じまい・空き家整理をお手伝いしている「まるはち 住まいの整理便」がお届けしました。遠方でなかなか様子を見に行けないお住まいについては、空き家見守りのページもどうぞ。
