一軒の家を片付けるのに、ゴミ袋はいくつ必要だと思いますか。
正解は「数えきれない」です。押し入れの奥の客用布団、食器棚にぎっしりの来客用の皿、物置のなかで眠る昔の家電。長年暮らした家には、想像の何倍もの物が詰まっています。いざ親の家を片付ける段になって、その量に立ちすくんでしまう——これは多くのご家族が通る道です。
近年よく聞くようになった「実家じまい」という言葉。なんとなく重たい響きですが、整理してみると、やるべきことは案外シンプルです。今日はこの実家じまいを、進め方・費用・期間の3つの角度からご案内します。
そもそも「実家じまい」とは何をすること?
言葉だけが先に広まって、中身があいまいなまま使われがちな「実家じまい」。ここで一度、整理しておきましょう。
実家じまいとは、ひとことで言えば「実家を整理して、その家の次の使い道へつなぐこと」です。ポイントは、片付けがゴールではないところ。片付けた先には、たいてい次の3つのうちのどれかが待っています。
- 売る — 家や土地を手放して、次の方に使ってもらう
- 貸す — 賃貸に出して、住みながら活かしてもらう
- 残す — 別荘や帰省先として、家族で持ち続ける
つまり実家じまいは「家の中を空にする作業」であると同時に、「この家をこれからどうするか」という家族の意思決定でもあるわけです。物の整理と気持ちの整理、その両方が同時に進む——だから少しだけ骨が折れる。そう考えると、納得がいくのではないでしょうか。
実家じまいの進め方 — 5つのステップ
では実際の段取りを見ていきます。やみくもに片付け始めると途中で力尽きるので、順番が大切です。おすすめは次の5ステップ。
ステップ① 家族で「方針」を相談する
最初にやるべきは、片付けではなく話し合いです。先ほどの「売る・貸す・残す」のどれを目指すのか。誰がいつ動けるのか。費用は誰がどう分担するのか。ここをあいまいにしたまま物を動かし始めると、あとから「あれを捨てたのは聞いていない」ともめる原因になります。最初の一時間の相談が、後の十時間を救います。
ステップ② 「残す・手放す」をざっくり仕分けする
次に、家の中の物を大きく仕分けます。コツは、最初から細かく分類しないこと。まずは「明らかに残す」「明らかに手放す」「迷う」の3つに分けるだけで十分です。迷う物は無理に決めず、ひとまとめにしておく。これだけで全体の量がぐっと見えてきます。
ステップ③ 重要書類と思い出の品を「先に」確保する
ここが実家じまいでいちばん大事な工程かもしれません。通帳・印鑑・権利証・保険証券といった重要書類、そしてアルバムや手紙といった思い出の品は、片付けの早い段階で別の場所に確保してしまいます。作業が本格化すると物の流れが速くなり、大切な物がうっかり処分の山にまぎれてしまう——これは本当によくある失敗です。先に救い出す。これを徹底してください。
ステップ④ 不用品を処分する
残すものを抜いたら、残りの不用品を処分します。家具や家電など量が多い場合は、自治体のルールで出すか、許可を持つ専門業者にまとめて頼むかを物量で判断します。少量なら自治体、トラックが必要な量なら業者、というのがおおよその目安です。
ステップ⑤ 掃除して、次の使い道へ引き渡す
家が空になったら、清掃して次のステップへ。売却なら不動産会社へ、解体するなら解体業者へ、貸すならリフォームの相談へ。実家じまいで整えた家が、ここから第二の人生を始めます。

費用はどう決まる? — 「物量・間取り・搬出のしやすさ」で変わる
いちばん気になるのが費用でしょう。ただ、実家じまいの費用に「定価」はありません。なぜなら、家によって条件がまるで違うからです。
料金を左右する要素は、大きく3つ。物の量・家の間取り(部屋数)・搬出のしやすさです。とくに見落とされがちなのが3つ目で、たとえば「2階の家具を階段で下ろす」「家の前にトラックが停められず離れた場所から運ぶ」といった条件は、作業の手間を大きく変えます。同じ量でも、運び出しやすい家とそうでない家では費用が変わってくるわけです。
とはいえ「だいたいの相場が知りたい」という声は多いもの。間取り別のおおよその目安を挙げておくと、こんなイメージです。あくまで物量・搬出条件・立地で変わる目安として、ざっくりとらえてください。
- 1R〜1K — およそ5〜10万円
- 2DK — およそ20〜25万円
- 3LDK以上 — 30万円以上(作業員6名規模になることもある目安)
部屋数が増えるほど物量も搬出の手間も増えるので、金額は段階的に上がっていきます。とはいえこれはあくまで目安。同じ3LDKでも、すっきり暮らしていた家と物が詰まった家では、かかる費用はまるで違います。料金の出方としては、軽トラック1台に積み放題で16,500円〜、それより多ければコンテナを使って49,500円〜(いずれも税込)といった具合に、量に応じた組み立てになるのが一般的です。正確なところは現地を見てもらって見積もりを取るのがいちばん確実です。詳しい料金の考え方は料金のページにまとめています。
費用は「片付け代」だけではない
もうひとつ知っておきたいのが、実家じまいの費用は不用品の処分代だけではない、ということ。家を手放すところまで考えると、いくつかの費用が積み重なります。内訳を分けて見ておきましょう。
- 不用品の処分費 — 家の中の物を運び出して処分する費用。実家じまいの中心になる部分
- ハウスクリーニング — 空になった家を清掃する費用。売却や引き渡しの前に入れることが多い
- 解体費(必要な場合)— 建物を取り壊す費用。木造30〜40坪で約200万円が目安とされますが、構造・立地・付帯工事で大きく変わります
- 登記費用(必要な場合)— 相続登記や名義変更にかかる費用
- 不動産の仲介手数料(売却する場合)— 売買を不動産会社に仲介してもらう際の費用
すべてがかかるわけではありません。貸す・残すなら解体費は不要ですし、片付けだけで終わるケースも多くあります。ただ「片付け代だけのつもりが、解体や登記まで考えると思ったより…」という声はよく聞きます。早い段階で全体像を把握しておくと、慌てずに済みます。なお高松市にお住まいなら、この費用の一部を後押ししてくれる制度もあります。
費用を少しでも抑えるには
「できれば安く済ませたい」というのは当然の気持ち。無理なくコストを抑えるなら、次の3つが効きます。
- 自治体の粗大ごみを併用する — 急がない物や少量の物は、自治体の粗大ごみ回収に出すと処分費を抑えられます。業者にすべてを頼まず、出せる物は自分で出す、という合わせ技です
- 複数の業者から見積もりを取る — 同じ作業でも、業者によって金額の出方は変わります。いくつか相見積もりを取って比べると、相場観もつかめて安心です
- まだ使える物はリユースに回す — 状態のよい家具や家電は、処分せずリユースの仕組みに回すことで処分量そのものを減らせます。捨てる物が減れば、その分の費用も軽くなります
期間の目安 — 数日で終わる家、1年がかりの家
期間も家次第です。家の中を片付ける作業そのものは、物が少なくご家族が近くにいれば数日で終わることもあります。一方で、物が多かったり遠方からの作業だったりすると数週間かけて少しずつ、ということも。
ただ、ここで言う「期間」が片付けだけを指すとは限りません。「実家じまい」を、家を売る・解体するところまで含めて考えると、全体ではおおむね3か月から1年以上かかるのが一般的です。相続人どうしの話し合い、名義の整理、不動産会社や解体業者とのやりとり——物を運び出した後にも、意外と工程が続くからです。
大切なのは、焦らず計画を立てること。「片付けは数日でも、家を手放すまでは年単位」と最初に分けて考えておくと、途中で「思ったより終わらない」と気をもまずに済みます。とくに遠方に住んでいる場合は、帰省のタイミングに合わせて「今回はこの部屋まで」と区切って進めると、無理なく前に進められます。

よくあるつまずき
実家じまいでつまずきやすいポイントを挙げておきます。
- 「いつか使うかも」で手が止まる — 迷う物は「迷う箱」へ。その場で判断しないのが進めるコツ
- 思い出の品で作業が止まる — アルバムを開くと半日が消えます。思い出は「あとでゆっくり」と決めて、まず仕分けを優先
- 家族で方針がそろっていない — ステップ①に戻りましょう。話し合いの不足が、いちばんのトラブルのもとです
よくある質問
最後に、実家じまいを前にしたご家族からよくいただく質問を、まとめてお答えしておきます。
費用は誰が払うの? 相続人で分担できる?
決まったルールはなく、ご家族で相談して決めるのが基本です。実家を相続する人がまとめて負担することもあれば、相続人どうしで分担することもあります。大切なのは、作業を始める前に「誰がいくら出すか」を話し合っておくこと。お金の話は後回しにすると角が立ちやすいので、ステップ①の方針相談のなかで、あわせて決めておくのがおすすめです。
費用を抑える方法はある?
あります。急がない物は自治体の粗大ごみ回収を併用する、複数の業者から相見積もりを取って比べる、まだ使える家具・家電はリユースに回して処分量を減らす——この3つが代表的です。とくに「全部まとめて業者に」と考える前に、自分で出せる物を仕分けておくだけでも、かかる費用は変わってきます。
どれくらい期間がかかる?
片付け作業だけなら数日から数週間が目安です。ただし、家を売却したり解体したりするところまで含めると、全体ではおおむね3か月から1年以上を見ておくと安心です。相続人どうしの話し合いや名義の整理、不動産会社とのやりとりに時間がかかるためです。「片付け」と「家を手放すまで」を分けて、ゆとりを持った計画を立てましょう。
何から始めればいい?
まずは家族で方針を相談することから始めてください。いきなり片付けに手をつけるより、「売る・貸す・残す」のどれを目指すかを先に決めるほうが、結果的にずっとスムーズです。方針が決まったら、通帳や権利証などの重要書類と思い出の品を先に確保し、それから不用品の仕分け・処分へ。順番を守るだけで、ぐっと進めやすくなります。
まとめ — 実家じまいは「終わらせる」より「次へつなぐ」
整理すると、実家じまいはこういうことでした。
- 実家を整理して、売る・貸す・残すという次へつなぐこと
- 進め方は「相談 → 仕分け → 重要書類の確保 → 処分 → 引き渡し」の5ステップ
- 費用は物量・間取り・搬出条件で変わるので、見積もりで確認するのが確実
- 期間は数日から数週間。遠方なら区切って計画的に
実家じまいというと、つい「片付けて、終わらせる」と身構えてしまいがちです。でも本当の目的は、家を空にすることではなく、その家とご家族にとっていちばん良い「次」へつなぐこと。そう考えると、少しだけ前向きに第一歩を踏み出せるのではないでしょうか。
このコラムは、高松市で実家じまい・空き家整理をお手伝いしている「まるはち 住まいの整理便」がお届けしました。何から手をつけるか迷ったときは、実家じまい・空き家整理のページものぞいてみてください。家財の量が多いときは不用品回収・大型家具処分のページも参考になります。
