「空き家を解体したら、土地の固定資産税が6倍になった」——そんな話を耳にしたことはありませんか。
この一言が、実は多くの誤解のもとになっています。「じゃあボロボロでも建てておいたほうが得じゃないか」と。ところが、ことはそう単純ではないのです。
今日は、空き家の固定資産税にまつわるよくある疑問をQ&A形式で整理します。「建てておけば安心」という思い込みを、ひとつずつほどいていきましょう。
空き家の税金、よくある疑問に答えます
Q. 空き家を解体したら、税金は上がるの?
結論からいうと、上がることがあります。ただし「解体」への罰金ではなく、からくりは「割引が外れる」ことにあります。
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」という優遇があり、土地は二段階に分かれます。200平方メートルまでの部分(小規模住宅用地)は固定資産税の課税標準が6分の1に、それを超える部分(一般住宅用地)は3分の1に。つまり家が建っているあいだ、私たちは土地の税金を大幅な割引価格で払っているのです。
あわせて納める都市計画税にも同じ考え方の割引があり、200平方メートルまでが3分の1、超える部分が3分の2です。
家を解体して更地にすると、土地の上から「住宅」が消え、この割引も一緒に外れます。割引前の金額に戻るので、結果として土地の税額が上がりうるわけです。どのくらい変わるかというと、200平方メートル以下の部分では最大で約6倍、超える部分では約3倍が目安。「税金が増える」というより「割引がなくなって、もとの金額に戻る」と捉えると分かりやすいでしょう。
Q. じゃあ、解体せず放置しておけば割引はずっと続くの?
ここが、いちばん大きな誤解です。答えは「いいえ、建っていても割引が外れることがある」です。
2023年(令和5年)12月13日に施行された改正空家対策特別措置法で、傷んだ空き家への対応が強化されました。新しく加わったのが「管理不全空き家」という区分。倒壊の危険があるほど深刻な「特定空家」になる手前、「このまま放置すれば特定空家になりそうな家」の段階から、行政が動けるようになりました。
行政の対応は、いきなり強い手に出るわけではなく、助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行と段階を踏みます。そして税金が重くなる分かれ目は、二段階目の「勧告」です。勧告を受けると、建物が建っていても住宅用地の特例が外れるのです。逆にいえば、助言や指導の段階で改善すれば、特例が外れる事態は避けられます。
つまり「壊さず建てておけば、ずっとお得」という前提は、もう成り立ちません。窓が割れたまま、庭が伸び放題といった状態を放っておくと、解体していなくても割引を失いかねないのです。
Q. 税額は、いつの時点で決まるの?
固定資産税には基準日があり、一般に毎年1月1日時点の状態でその年の課税が決まるとされています。
ですから「年内に解体するか、年明けまで待つか」で、その年の扱いが変わることがあります。ただし自治体によって細かな取り扱いは異なるので、タイミングを判断する前に、必ず市の窓口で確認してください。
ちなみに、空き家はいまや珍しいものではありません。総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と、いずれも過去最多。およそ7戸に1戸という時代です。だからこそ国も自治体も、空き家の管理に本腰を入れはじめています。
Q. 「6倍」って、どの家でも必ずそうなるの?
いいえ、「6倍」はあくまで割引の倍率からくる目安です。実際にいくら変わるかは、土地の評価額や面積、地域によって一軒ごとに違うので、「うちも必ず6倍」と決めつける必要はありません。
「残す」と「解体する」のどちらが得かは、土地の評価や面積、傷んだ家の修繕費や管理の手間まで含めると、ケースによって本当にさまざま。数字の印象だけで判断しないことが大切です。
Q. 税金のことだけで、解体するかどうかを決めていいの?
これは見落とされがちな視点です。税額は判断材料のひとつにすぎません。
たとえば傷んだ家を残せば、台風で屋根材が飛んだり外壁が崩れたりして、ご近所に迷惑をかけるリスクがあります。万一倒壊して人にけがをさせれば、持ち主の責任が問われることも。一方で、思い出の詰まった家を急いで壊す必要が本当にあるのか、という気持ちの問題もあるでしょう。税金・管理の手間・近隣への影響・ご家族の思い——これらをてんびんに載せ、お金の一点だけで急いで結論を出さないのが現実的です。
Q. 「管理不全空家」と「特定空家」は、何が違うの?
深刻さの段階が違います。特定空家は倒壊の危険があるなど、すでに深刻な状態。一方の管理不全空家は2023年の改正で加わった区分で、「このまま放置すれば特定空家になりそうな家」、いわばその一歩手前です。窓が割れている、庭木が越境しているといった段階から行政が動けるようになりました。
Q. 結局、いつの時点で割引(特例)が外れるの?
分かれ目は「勧告」を受けた時点です。手前の助言・指導の段階では、まだ割引は外れません。「指導が来た=すぐ増税」ではなく、その段階で窓を直したり庭木を刈ったりして改善すれば外れずに済みます。放置して勧告まで進むと割引を失う、という順序です。
Q. 解体して更地にしたら、税金はどうなるの?
更地には住宅がないため、住宅用地の特例(割引)は適用されません。そのぶん土地の固定資産税は上がりえます。ただし建物がなくなれば建物ぶんの固定資産税はかからなくなるので、土地と建物を合わせて見れば、印象ほど単純な増減にはなりません。
Q. 方針が決まったら、次は何をすればいい?
「残す・貸す・売る・解体する」のどれを選んでも、たいてい次に待っているのが「家の中の物をどうするか」です。
解体するにも、まず家財を運び出さなければ重機は入れられません。貸すにも住むにも、荷物が詰まったままでは前に進めない。つまり税金の判断と並行して、家財の片付けも早めに考え始めておくと、いざ動くときがスムーズです。なお、相続した家の名義がまだ変わっていない場合は、その前にやっておきたい手続きがあります。相続登記の義務化の記事でくわしく書いています。

まとめ — 「建てておけば安心」は、もう過去の常識
誤解を解いておさらいします。
- 解体で税が上がりうるのは「住宅用地の割引が外れる」から
- でも、放置しても勧告を受ければ建物があっても割引は外れうる
- 課税は一般に毎年1月1日時点の状態で決まるとされる
- 「6倍」は目安で、実際の差額は土地や地域でまるで違う
かつては「ボロボロでも建てておけば税金がお得」が定番でしたが、法律が変わった今、その前提は崩れています。解体しても放置しても、それぞれにコストとリスクがある——だからこそ、空き家は「どう放っておくか」ではなく「どう動かすか」で考える時代になりました。実際の税額や最新の取り扱いは、お住まいの市の窓口で確認するのが確実です。
このコラムは、高松市で実家じまい・空き家整理をお手伝いしている「まるはち 住まいの整理便」がお届けしました。空き家の今後を考える際は、実家じまい・空き家整理のページものぞいてみてください。
