結論から言うと、住民票を移しても、家や土地の登記簿の住所は変わりません。2026年4月からは、名義人の住所や氏名が変わったら、2年以内に変更の登記を申請することが義務になりました。ただ、法務局に一度申し出ておけば、その後は法務局が書き換えてくれる仕組みもあります。
- 住民票は市町村、登記簿は法務局の帳簿。引越しの届け出をしても、登記簿の住所は書き換わらない
- 住所や氏名が変わった日から2年以内に変更登記が必要。2026年4月より前の変更も対象で、期限は2028年3月31日
- 無料の「検索用情報の申出」をしておけば、法務局が本人の了解を得て書き換える(スマート変更登記)
引越しをしたら、転入届を出して、運転免許証の住所も書き換えて。これで住所の手続きは一通り終わった、と思いますよね。ところが家や土地を持っている人には、もう一つ「登記簿」が残っています。持ち主にたどり着けない土地は全国で九州ほどの広さになるともいわれ、その原因の約3分の1は、登記簿の住所が古いままになっていることだといわれているんです。
住民票を移しても、登記簿の住所が変わらないのはなぜ
実は、住民票と登記簿は、別々の役所が別々に作っている帳簿なんです。
住民票をまとめた住民基本台帳は、市町村が作るもの。一方、家や土地の登記は、その不動産のある地域を受け持つ法務局(登記所)が扱います(不動産登記法6条)。そして登記には、当事者が申請しなければ、原則として登記はできないという決まりがあります(同法16条)。市役所で引越しの届け出をしただけでは、登記簿の住所は書き換わらないわけです。
法務局が自分で住所の変化を調べようにも、手がかりが足りません。登記簿に載る名義人の情報は氏名と住所で(同法59条)、住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)で本人を探すには、生年月日なども本人から届けてもらう必要があるからです。この届け出をもとに動くのが、あとで紹介するスマート変更登記です。
自分の家の登記簿の住所は、法務局で登記事項証明書を取ると、所有権について書かれた「甲区」という欄で確かめられます。
2026年4月から、住所と氏名の変更登記は「2年以内」の義務に
住所を変える登記は、これまで義務ではありませんでした。そこで2021年に法律が改正され、2026年4月1日から義務になりました。家や土地の名義人(所有権の登記名義人)は、住所や氏名が変わった日から2年以内に、変更の登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の5)。転勤などの引越しで住所が変わったときも、結婚などで氏名が変わったときも対象です。
注意したいのは、2026年4月より前の変更も対象になることです。変更の登記をしていなければ、2028年3月31日までに済ませる必要があります。何十年も前の引越しでも同じです。
同じ2021年の法改正で、相続登記は一足先に2024年4月から義務になっています。こちらは相続登記の義務化の記事で詳しくまとめています。

罰則より困るのは、放っておくほど書類集めが増えること
「義務」と聞くと、罰則が気になりますよね。正当な理由がないのに申請を怠ると、5万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条2項)。
ただし、期限を過ぎたとたんに科されるわけではありません。法務省の説明では、登記官が義務違反に気づくと、まず期限を決めて登記をするよう催告書を送ります。その期限までに登記も申出もされなかったときに限って裁判所へ知らせ、過料を科すかどうかは裁判所が決めます。
登記官が気づくきっかけとして、法務省は次のような場面を挙げています。
- 建物を取り壊したときの滅失登記のような「表示に関する登記」を名義人が申請し、その住所が登記簿と合っていなかったとき
- 後で紹介するスマート変更登記で、法務局から住所を書き換えてよいかの確認が届いたのに、断ったり期限までに答えなかったりしたとき
一方、重い病気の事情があるとき、市町村の合併など行政区画の変更で住所が変わったとき、申出を済ませて法務局の手続きを待っているときなどは、登記をしないことに「正当な理由」があるものとして扱われます。
つまり、この義務化は「怖い罰則の話」というより、「後回しにするほど手間が増える話」なんです。登記簿の住所から今の住所までに何度も引越していると、住民票の写しだけでは引越しの経緯を証明できないことがあり、戸籍の附票の写しなどで住所のつながりを示す必要が出てきます。
一度申し出れば、法務局が書き換える「スマート変更登記」
引越しのたびに登記を申請するのは面倒ですよね。そこで用意されたのが「スマート変更登記」です。法務局に「検索用情報の申出」をしておくと、その後は法務局が住所や氏名の変更を確かめて、書き換えまで行います。
申出のあとは、次の流れです。
- 法務局が少なくとも2年に1回、住基ネットに照会して、住所や氏名が変わっていないかを確かめる
- 変わっていたら、「変更の登記をしてよいか」を確かめるメールが届く(メールアドレスを届けていない人には書面)
- 了解と答えると、法務局が職権で(本人の申請を待たずに)変更登記をする。これで義務を果たしたことになる
申出も、その後の書き換えも無料です(書き換えの登記は非課税)。申出は「かんたん登記・供託申請」のウェブページから、氏名とふりがな、住所、生年月日、メールアドレス、不動産の地番などを入力して行えます。押印や電子証明書は要らず、運転免許証などの身分証明書の写しを添えます。2026年10月5日からは国籍も申し出る項目に加わり、本籍の載った住民票の写しなど、国籍を示す書類が要る場合があります。書面で法務局に出すこともできます。
全部を自動にせず、本人に確かめるのはなぜでしょう。法務省の資料によると、新しい住所を登記簿で公開されると困る人(DV被害を受けている人など)もいることなどをふまえ、名義人の了解を得てから書き換えることにしています。なお、届けた生年月日やメールアドレスは、登記簿で公開されません。
登記簿の住所がすでに古いままの人も、今の住所(住民票の住所)で申し出れば、法務局から「登記簿の住所を今の住所に書き換えてよいか」を確かめるメールが届き、了解すれば書き換えてもらえます。
個人について法務局がこの照会を始める時期は、法務省の「スマート変更登記のご利用方法」のページで改めて案内するとされています(2026年9月時点)。申出を済ませていれば、書き換えを待つ間も「正当な理由」がある扱いです。早く住所を直したいときは、これまでどおり自分で申請します。
家や土地を買ったり相続したりして名義人になるときは、その登記の申請書に検索用情報を書いて申し出ます(2025年4月21日から)。対象はそのとき登記した不動産だけなので、前から持っている不動産は別に申し出ます。海外に住んでいる人はこの仕組みを使えず、自分で申請します。
自分で申請するなら、費用は土地や建物1つにつき1,000円
登録免許税は土地や建物1つにつき1,000円です。土地1つと建物1つなら2,000円で、収入印紙で納めます。敷地が登記簿の上で複数の土地に分かれていれば、その数だけかかります。
申請書に添えるのは、登記簿の住所(引越し前の住所)と今の住所、引越した日が載った住民票の写しです(マイナンバーの載っていないもの)。何度も引越している場合は、先ほどの戸籍の附票の写しなどが加わります。申請書に住民票コードを書くと、住民票の写しを省略できる場合もあります。
申請書は自分で作ります(法務局は作成を代行できません)。出し先は、その不動産のある地域を受け持つ法務局で、窓口に持っていくか、書留で郵送します。高松市の家や土地なら、窓口は高松法務局の本局(高松市丸の内1番1号 高松法務合同庁舎、電話087-821-6191)です。香川県内は、本局のほか丸亀支局、観音寺支局、寒川出張所に受け持ちが分かれています。
書き方に迷ったら、法務局の「登記手続案内」が使えます。完全予約制で1回20分以内、電話・窓口・ウェブ会議から選べます。手続きそのものを任せたいときは、司法書士や弁護士に頼みます。
状況別の早見と、親名義の実家で気をつけたいこと
| こんなとき | いつまでに | まずやること |
|---|---|---|
| 2026年4月以降に引越した、氏名が変わった | 変わった日から2年以内 | 申出をするか、自分で変更登記を申請する |
| 2026年3月までに引越して、登記簿の住所が古いまま | 2028年3月31日まで | 今の住所で申出をするか、自分で申請する |
| これから家や土地を買う | 購入の登記を申請するとき | 申請書に検索用情報を書く。前から持っている不動産は別に申し出る |
| 親名義の実家で、親が住所を移した | 変わった日から2年以内(2026年3月までの変更なら2028年3月31日まで) | 名義人である親本人が申出か申請をする |
| 親名義の実家に、親が住み続けている | — | 住所が変わっていなければ、住所変更の登記は要らない |
親名義の実家では、義務を負うのは名義人である親御さん本人です。代理人が申し出る場合も、届けるメールアドレスは名義人本人だけが使うものに限られ、子どもなど親族のアドレスは書けません。親御さんがメールを使っていない場合は、「なし」として申し出ると、確認は書面で親御さんの住所に届きます。
実家じまいで建物を取り壊したときの滅失登記も、名義人の住所が登記簿と違っていれば、催告のきっかけになりえます。解体を考え始めたら、登記簿の住所が親御さんの今の住所と合っているかも見ておきましょう。
親御さんが亡くなって実家を相続したときに必要になるのは、名義を書き換える相続登記です。相続登記も「所有権の移転の登記」にあたるので、その申請書で検索用情報を申し出ておけば、その後に住所が変わったときは、法務局が確認したうえで書き換えます。

まとめ — 住民票と登記簿は別もの、と覚えておく
- 住民票は市町村、登記簿は法務局。引越しの届け出をしても登記簿の住所は変わらない
- 2026年4月から、住所や氏名が変わった日から2年以内の変更登記が義務に。それより前の変更は2028年3月31日まで
- 過料は5万円以下で、催告を経てから。困るのは、放っておくほど住所のつながりを示す書類が増えること
- 無料の申出をしておけば、法務局が本人の了解を得て書き換えてくれる
引越しの手続きの一覧に「登記簿」の一行を足しておくだけで、何年もたってから古い住所をたどる手間を減らせます。親名義の実家なら、親御さんの住所が登記簿と合っているかを、家族で一度確かめておきましょう。
実家の片付けで出てくる権利書などの書類は実家の片付けで捨ててはいけない重要書類、実家じまい全体の段取りは実家じまいの進め方の記事でまとめています。
このコラムは、高松市で実家じまい・空き家の整理をお手伝いしている「まるはち 住まいの整理便」がお届けしました。実家の片付けを考え始めたら、実家じまいのページもどうぞ。
