結論から言うと、秋のお彼岸は実家のことを考え始めるのに向いた時期です。目的は決めることではなく、気づくこと。気候がよく、年末までの逆算がしやすく、春の繁忙期を外せるからです。
- 2026年の秋分の日は9月23日(水)。9月20日の日曜から4連休になり、この形の連休は11年ぶり
- 秋が向く理由は4つ。気候が作業を選ばない/年末までの逆算がしやすい/年度替わりの手続きに余裕が持てる/春の繁忙期を外せる
- この時期にできるのは、方針を決めることより、実家の変化に気づくこと
お彼岸というと、なんとなく「ご先祖様が帰ってくる日」というイメージがありませんか。実はそれ、お盆の話なんです——お彼岸は、こちら側から向こう側を思う期間。その「思う」季節が、実家のことを思い出す季節にもなります。
お彼岸に、ご先祖様は「帰ってこない」って知っていましたか
お彼岸というと、なんとなく「ご先祖様が帰ってくる日」というイメージがありませんか。
実はそれ、お盆の話なんです。
お盆は、迎え火を焚いてご先祖様を家にお迎えし、送り火で送り出す行事です。主役は「帰ってくる側」。だから飾りつけも支度も、迎える側の準備が中心になります。
いっぽうお彼岸は、迎える行事ではありません。こちら側から、向こう側へ想いを寄せる期間です。仏教では、迷いのあるこの世を「此岸(しがん)」、悟りの世界を「彼岸(ひがん)」と呼びます。彼岸は西にあるとされてきました。
ここで、春分と秋分という日がきいてきます。この日、太陽はちょうど真東から昇って真西へ沈みます。昼と夜の長さもほぼ同じになる。太陽の通り道が、こちら側と向こう側を一直線に結ぶ日というわけです。だから一年でいちばん想いが届きやすい期間とされ、お彼岸の風習になりました。
つまりお彼岸は、誰かが訪ねてくるのを待つ日ではなくて、こちらから思い出す日なんですね。
「向こう側を思う」季節が、実家を思い出す季節にもなる
この「こちらから思い出す」という性格が、お彼岸という期間の使い勝手のよさをつくっています。
お盆は行事としての段取りがぎっしり詰まっています。親戚も集まるし、迎える準備も片付けもある。落ち着いて何かを考える時間は、意外と取りにくい。
お彼岸は、そこまでの支度がいりません。手が空く。頭も空く。そして、亡くなった人のことや、家のことや、自分がこれからどうしていくかに、自然と意識が向きます。実家の将来を考えるのに、これ以上ふさわしい空気の季節はそうありません。
2026年の秋彼岸は、まとまった時間が取りやすい
お彼岸の期間は、秋分の日を中日として、その前後3日ずつを含めた7日間です。秋分の日そのものが年によって動くので、彼岸入りの日付も毎年少しずれます。
国立天文台が発表している暦によると、2026年の秋分の日は9月23日(水)。ですから秋彼岸は9月20日ごろから26日ごろまで、ということになります。
そしてこの年は、少し珍しいことが起きます。9月21日が敬老の日、23日が秋分の日。あいだにはさまれた22日が祝日法の規定で休日になり、20日の日曜から4連休になるんです。この形の連休は11年ぶりだそうです。
遠方に実家がある方にとって、4日というのはちょうどいい長さですよね。往復に一日ずつ使っても、まる二日は実家にいられる。日帰りではとても見きれないところまで、目が届きます。
帰省したときに、目に入っているのに見過ごしてしまう変化
ここからが本題です。
実家に帰ると、たいていの人は「変わってないなあ」と思います。でも、それは変わっていないのではなくて、少しずつ変わったので気づいていないだけということが、けっこうあります。
年に数回しか帰らないからこそ、変化は「差分」として見えるはずなんです。ただし、見ようとしていないと通り過ぎてしまう。何を見ればいいかだけ、先に知っておくと違います。
| 見るところ | 気づきたい変化 |
|---|---|
| 玄関から居間までの通り道 | 床に物が置かれて、歩ける幅が狭くなっていないか。以前はまっすぐ歩けた場所を、体を斜めにして通っていないか |
| 使っていない部屋 | 子ども部屋や客間が、いつのまにか物置になっていないか。ドアが半分までしか開かなくなっていないか |
| 台所と冷蔵庫 | 同じ調味料や同じ食材がいくつも買われていないか。買い置きが増えるのは、あるかどうか思い出せないサイン |
| 親の手が届く高さ | よく使う物が、腰から目線の高さだけに集まっていないか。高い棚や低い引き出しが、事実上使われなくなっていないか |
| 家の外まわり | 庭木が伸びていないか。雨どいや物置の様子はどうか。屋外の物が増えるのは、家の中に置き場がなくなった結果のことがある |
とくに通り道の幅は、いちばん静かに進んでいて、いちばん危ないところです。物が置かれた分だけ生活動線は細くなり、夜中に足を引っかける確率は上がります。転倒は、そのあとの暮らしを一気に変えてしまうことがあります。
もうひとつ、親が「片付けなきゃね」と口にする回数も見ておくといいと思います。回数が増えているなら、本人もそろそろ気になっているということです。切り出しやすい時期に来ている、という合図でもあります。

なぜ「秋」が、着手時期を考えるのに向いているのか
気づいたとして、では今すぐ動くべきなのか。ここははっきりさせておきたいところです。
秋に向いているのは「いつやるかを決めること」であって、「その場で片付けきること」ではありません。この二つは、まったく別の作業です。
そのうえで、秋というタイミングには理由があります。
気候が、作業を選ばない
夏の家の片付けは、想像以上に体にこたえます。締め切った実家の室内は外より暑くなりますし、荷物を運ぶと汗が止まりません。冬は冬で、水回りや屋外の作業がつらい。9月下旬から11月は、その両方を避けられる数少ない時期です。
年末までの逆算がしやすい
秋に「やる」と決めておくと、年末年始に家族が集まる場が、次の相談の場として使えます。逆に、年末に初めて話題を出すと、そこから動くのは春以降になりがちです。半年ずれます。
年度替わりに向けた手続きの余裕が持てる
実家をどうするかという話は、片付けだけで終わりません。名義や登記、税の扱いといった手続きがくっついてきます。たとえば相続登記は2024年4月から義務化されていて、期限が定められています(相続登記の義務化について)。こうした調べものは、年度末の慌ただしい時期より前に始めておくほうが、確実に楽です。
春の繁忙期を外せる
引っ越しや片付けの依頼は、3月から4月に集中します。年末も混みます。秋のうちに「春までにやる」と決めておくと、日程の選択肢が残っているうちに動けます。
「まだ元気だから」は、いちばんもっともな先送りの理由
実家じまいの話が進まない理由は、たいてい家族の仲が悪いからではありません。先送りする理由のほうが、いつも正しく聞こえるからです。
「親はまだ元気だし」。そのとおりです。「急ぐ話じゃない」。それも事実でしょう。「本人が嫌がるかもしれない」。ありえます。どれも反論しにくい。だから一年、また一年と流れます。
ただ、ひとつだけ言えることがあります。親が元気なうちにしかできないことがある、ということです。
どれが大事な物で、どれが捨てていい物か。この判断ができるのは、基本的に本人だけです。押し入れの奥の箱の中身も、たんすの引き出しの底に何を入れたかも、家の権利にまつわる書類がどこにあるかも、知っているのは親です。本人が元気なうちなら、それは「教えてもらう」で済みます。あとになるほど、残された側が推測で決めることになります。
だから、お彼岸に帰省したときにやることは、押し入れを開けることではありません。家の様子を見て、気になったことを覚えて帰る。それだけで十分です。そこから家族で話す機会をつくれば、実家じまいは「いつかやること」から「いつやるか決まっていること」に変わります。

お彼岸にできるのは、決めることより「気づくこと」
お彼岸は、ご先祖様を迎える行事ではなく、こちらから想いを寄せる期間でした。太陽が真東から真西へ渡っていく数日間、向こう側との距離がいちばん近くなる、と昔の人は考えたわけです。
その「思い出す季節」に実家へ帰るのなら、家のことも一緒に思い出してみる。通り道の幅、開かなくなったドア、増えた買い置き。見ようとすれば見えるものは、けっこうあります。
その場で片付ける必要はありません。気づいたことをひとつ持ち帰る。それだけで、実家じまいのタイミングは半年から一年ぶん前倒しできます。
実際に何から手をつけるかという段取りは、実家じまいの進め方5ステップにまとめています。お盆に帰省したときの動き方はお盆の帰省で実家の片付けを進める段取りを、しばらく空き家のままにしておく場合の注意点は空き家見守りのページをご覧ください。
このコラムは、高松市で不用品回収・実家じまいのお手伝いをしている「まるはち 住まいの整理便」がお届けしました。実家じまいの進め方は実家じまいのページもどうぞ。
